スキルマネージメントが大切な本当の理由(たぶん)

それなりにネタはあるはずなのだけれど,NDAだの書籍執筆のネタだのと被ってしまう.素の技術系日記が書けないので notart 系の日記やら twitter やらに走ってしまう.

ダメすぎた気がするので,何か書く.

成績

血縁にある子供がそれなりの年齢になれば,通知表に記載された成績についてヒトコト言わないといけなくなるのが,オトナの務めではある.

私は子の親ではあるので,その急先鋒なのだけれども,いつも憂鬱だ.ブッチャケ言うなら,官僚組織の下部組織が付けた成績なんて,どうでもよいはず.

だって,「経産省の産業分類に組込みソフトウェア業が含まれるようになりましたー」ってESECだかETだかのレセプションで拍手したのは,たぶん至近5年内くらい.現在的なコンピュータゲーム業界が勃興したのは,至近20年くらい.没落した業界をあげつらうほど趣味は悪くないので言わないが,至近20年の間に,産業構造は大きく変わった.
今の小学生がオトナになったときに花形になっている産業は,今の小学生が産まれた頃に勃興したものである可能性が強い.経験値が低い小学生が勃興したばかりの業界への夢を卒業文集に書けるとしたら,周囲がよほどアンテナを張り巡らせているレアケースだろう.この世は移ろいが早すぎる.

こんな速度で遷ろう世の中で,ジャストフィットな教育が施されていると思うオトナがいるはずもない.
しかしまあ"昨日のことは役に立ちません"では立てる竿もなく流されてしまう.移ろいの速度に関係なく,何かと比較しないわけにはいかない.同世代の横の比較が無意識的に禁忌される世界では,過去との比較がお手軽で良いということに落ち着きがちかもしれない.

私事

実母はいい加減だけれど物持ちの良い人で,私の中学校までの通知表をいまだに段ボール箱にしまい込んでいる.
っていうと,「じゃあ勉強しろってお子さんに言えませんね」って反応が大抵返ってくる.
けれども,ごあいにくさまなことに,私は中学生までは(区立を選んだこともあって)割と内申点がよかった.20年近く経った今でも,当時の先生方からその話が出る程度には *1

当然のことながら親の欲目に対する補正が必要ではあるけれども,長女は(特定の区立小学校の当該学年内では),割と立派な通知表を持ってくる.次女も,伏兵的に,それなりの通知表を貰ってくる.控え目に言っても偏差値50以上ではあるだろう.
だが,私の通知表には敵わない.もちろん,相対評価であるとか評価者の違いとかはある.けれども,定量化されたものには,意味があろうが無かろうが,相応の重みがある.

スコアリングの本当の意味(たぶん)

子供が親に何か言われて反発するときのツールとして「パパ/ママは,私たちくらいのときどうだったのよ」というのがある.大抵の親はエビデンスを持っていないので,子供としてはこれを突破口とする.私も使った気がする.けれども,私にはエビデンスがあり,子供たちには逃げ道がない.

私は人間ができていないので,最初の頃は"ふあははははwww".という気分にもなった.実の子に対して.

…のだけれど,しばらくして,スコアリングの本当の意味が,私なりに解ってきた.
通知表に記載されたスコアを取るために,何を{したか|しなかったか}とか,スコアを受け取ったときに,何を{思ったか|思わなかった}とか.そういうことを思い出すことに意味があるのではないかと.

自分の実家に帰ったある日,自分の通知表を開いてみた.自分でもビックリするくらい,当時が鮮明に蘇ってきた.
やたらと私の通知表を覗いてくる私学進学志向のウザい友達のこと.冷めた顔でメダカだったかザリガニだったかに餌をあげている友達のこと.一緒に返してくれる図工の絵をニコニコしながら眺めている友達のこと.

人(特にエンジニア)は経験を積むほどに,"自分よりも経験の浅い人も自分と同程度の能力を持つ"と勘違いしていく.そのくせ,自分以外の誰かを指して,本質的に不適格なのではないかというような判断をする.
これは,古典であるハッカーズ大辞典でも指摘のある傾向なので,おそらく古今東西避けようのない話.

だから

スキルマネージメントに大切なのは,ある時点での試験やその点数ではなくて,試験時点よりも成長した時点での,その点数への振り返りなのかなという気がする.
その時,何を思っていたのか.何に期待して何に不安を持っていたのか.

そして,こういった情報を20年程度のあいだ保持してくれることは,いくつかの例外を除くと,試験業者の方々には期待できない.本エントリで例示したとおり,テスト対象の業種は,10年後でさえ有るかどうか断言できない.

だから,スキルマネージメントが必要な理由があるとすれば,それは1つしかない気がする.
「移ろいゆく技術傾向の中で,ときどき数値化というタグ付を行うことで当時を振りかえやすくし,自らが枯れたときに,傲慢にならず後進へ的確な助言ができるようになるため.」

組込みシステム業界においては,ETSSのようなスキル標準を作った人たち…つまり40〜60歳代の人々には無理なことが一つある. それより若い世代は,試験を受け点数を見ることでその瞬間の自分をタグ付けできる.点数はさておき,そのタグはきっと役に立つ.オッサンになってから.

試験の意味

テスト結果次第で会社から手当や一時金が出るというのは切実なメリット.点数も,それはそれとしてその瞬間には一大事.
それはそれとして,その瞬間に思ったことの記録…ライフログとして試験を受けて結果を覚えておくというのは,将来まで見越すと,成績の如何に関わらず割と大事な話なのかもしれない.

*1:…その後,高校で遊び呆けて,某原発並みに成績崩壊したという笑えない落ちがつくのだけれど.