メインバンクの支店長との雑談で,組込みソフトウェアビジネスの難しさに思いを馳せる.

たまには当たり障りの無い話も.


私は,現役エンジニアのつもりですが,商法上は法人代表者なので,資金繰りもします.
金融機関というのは考えてみれば大変な職場で,相手の仕事がどんなものなのか判らないまま,不確かな財務諸表を基に金を貸すかどうかを決定することが求められます.
これが八百屋さんとか魚屋さんなら,きっと相対的に楽なのだろうと思いますが,"組込みシステムのオープンソース適用が得意で,ツールからカーネルから教材まで扱う独立系ソフトウェアハウス,でもハードも作るけどね"なんていうのは,相当扱いづらいでしょう.我ながら思います.


新しく赴任した支店長が,今日,挨拶にお見えになりました.
「コンピュータの世界はからきし判りません」「前の職場でもコンピュータ関係の会社とのお付き合いがありましたが,最後まで内容が判りませんでした」と.
正直なところでしょうし,そらまそうでしょうとも思います.コンピュータ屋の私だって,金融機関のトランザクションシステムとか無停止が要求されるポータルとかは判りませんから.ましてや.


話は飛びますが,物理インタフェースに融け込んで,自分が組込みシステムを使っていると思わせないのが,組込みシステムの理想といえます.クルマの中に100個のECUがあるといっても,それを自覚するのは使いづらいカーナビにイラつくときくらいで,そのほかは旧来のインタフェースの延長線上に融けています.ガスも水道も電気も電話も,組込みシステムがなければ動きませんが,蛇口をひねるのにキーボードを叩く必要はありません*1


そこに思いを馳せると,目の前に座っている支店長の発言は,褒め言葉でもあります.コンピュータが判らなくても生きて行けるシステムを作ることが,組込みシステムの理想の一つではあるからです.
判らなくてよいです.それでもみんなが幸せなのが理想です,と.


でも,メインバンクには,何を業にしているのかを理解して頂かないと,法人と金融機関の関係としては辛かったりとか.
理想と現実,難しい.

*1:ああ,電話については,最近,モリクミとiPhoneで盛り上がっているようですが…