直接関係する技術ばかり追わない.

直接関係する技術ばかり追うと,バカになっちゃうので,読む.

4Gbpsを超えるWebサービス構築術

4Gbpsを超えるWebサービス構築術

個人的にはパラレルワールド

実は,5年以上前,パケットリピータとhttpsで防火壁を超えつつネットの向こうにあるDBを引いてきてごにょごにょしトンネルを掘るマルチプラットフォームで動作するサバクラなシステム,という複雑きわまりないものを必要としているベンチャーに対して,肝の部分で,サーバクライアント両側で技術協力していた.ので,今言うwebサービスの何が辛くてどう対策すべきかという問題意識だけは古い記憶に残っている.

その後,webインフラの世界を選択した人たちがどう解決したのかという足取りが,この本には載っている.
たとえば,キューイング,DBキャッシング,分散ストレージは2003年頃は,オープンソースを使った適切な解がなかなか見つからない状態だったと思う.Livedoormemcachedを使い始めたのが2004年とのことで,規模はさておき,同じような時期に同じような問題意識を持っていたのだな.

私は,その後,組込屋として完全に舵を切るのだけれど,もしwebインフラを選んでいたならばと.パラレルワールドを見た気分.10年あれば,専門が変わることも珍しくない.私と似たような気分になるエンジニアは多いのではないかと思う.個人的には,この本は,お勧め.

本職の人にとって参考になるかは…微妙.でもお勧め.

ただし,ここに載っている技術は,すべて使用する技術およびその実装の紹介であって,具体的なチューニングパラメータにまでは踏み込んでいないし,現時点での悩みどころに触れているところも無い様子.だからまあ


同社は、ここまで信じているのである。

インターネットの、可能性を。

ってのはちと言い過ぎだろう.護るものは護った上で,咀嚼しきった事柄のメニューだけを公開したって感じではなかろうか.おそらく,ネットワークインフラの現役エンジニアが必携とする本では無いだろう.
それでもなお,希有な本だとは思う.咀嚼しきった残滓さえ,外には出したがらないのが多数派だろうから.

組込み分野では

オープンソースを使って,どのように実際のシステムを構築するか.という類書が思い浮かばない.
info読めば判るコマンドラインパラメータを延々と紹介している本とか,ステップ実行できないgdbstubの紹介とか信頼できないスタートアップルーチンの紹介とかはあるし,大学や専門学校で使うような教科書もある.カーネルの移植を行う本もある.AndroidOSXHello Worldっていう本は山のようにある.
それらも存在意義が無いわけでもないけれども,「4Gbps〜」と比較してしまうと,踏み込みが全然足りていないと思う.

たぶん,業界が,信じていないのだろうな.


"何を"なのか.それは言っている私にも判らない.判るまでは本は書けないだろうなぁ.