ギーガーやMatrixの世界に似ていると気味悪がられたとしても,それが大事なの.

まずは擦り合わせ


ジョエル氏のコラムの要点は「管理職はプログラムを使役するのではなく、最大の効率が出せるよう気を使ってやるべき」
たぶん,この辺りから読みがズレてしまっていますねぇ.

ジョエルは,ベキ論を話しているわけではなくて,セールスやコーディングのことしか頭にない会社を例示した上で,


プログラマによって駆動され、プログラマを運転席に据え、しかしデッキの下でコードを製品に変換する重労働はすべて抽象化しているような会社であれば、そのような会社を簡単に払拭できる。
というふうに定性的に表現しているに過ぎません.使役するかどうかについての言及はまったくありません.


もうひとつジョエル氏の文書で鼻につくのは、日本でも良く目にするプログラマ至上主義です。「プログラマ最高、プログラマである、俺様最高」という、離れてみていると噴出しそうな幻想です。
これもたぶん誤解.プログラマは,(別途自覚して教育をうけなければ…とまではジョエルは言及していませんが)プログラミング以外の能力は無い,抽象化レイヤに守られていることを忘れるな,というのがジョエルの主張と私は受け取ります.
プログラマが最高ならば,"ソフトウェア会社がコードを書くことで運営できる"はずですが,そういう考えは幻想として与えられるものだと一刀両断しています.

ブタに泳ぎ方を教えようとするようなものだ。時間を無駄にするだけで、ブタの方こそいい迷惑だ。

Microsoftはこの抽象化を作り出すことに非常にたけており、Microsoftの卒業生たちが会社を起こしてもなかなかうまくいかないことはよく知られている。彼らはデッキの下でいかに多くのことが行われているかを単に理解できず、それを再現することができないのだ。

要するに,プログラマは何もわかっちゃいないという論点.

結局は部品なんだ

程度の差こそあれ,社会というのは,構成員各自が自らを部品化をすることで成り立っていると言って良いはず.ごく稀に,プログラミングからハード設計から経理からお茶汲みまでできる人というのは存在するけれども,それは極めて稀.その稀な例だって,会社を作って事務員雇って,なるべく自分が最も効率よく成果を出せるようなシステムを自ら作ろうとする.
これを,ビッグブラザーの差し金だと思うと,Matrixの世界になってしまうわけだけれども,実際には相互依存で成り立っていることは言うまでもない.


急成長を遂げたハイテクベンチャーは,その部品化が上手い.ビジネス書のコーナーにいけば,うなるほどこの手の話は転がっているので例示はしない.



プログラマはプログラムを組むのが得意なだけで,そのほかは何もわかっちゃいない*1.そこをはっきりと認識しておく必要がある.


プログラマの中には起業して成功した人もたくさんいるし,未踏の採択者のなかには工房を立ち上げた人もいる(私もだ).しかしそれは,プログラマであると同時に,起業に必要なスキルや動機を持っていた,と理解するほうが妥当のはず.プログラマとして優れていたかどうかとはあまり相関がない.
未踏はプロジェクトマネージャにより採択の基準が異なる.なかには,起業のスキルも踏まえた上で採択された人もいるだろうけれども.



多くのプログラマは,特にある一定以上のスキルを持っている人は,(もちろん個体差はあるけれども)自分自身の可能性と限界を割と冷静に見ている.ビルゲイツやビルジョイが,単にプログラマとして優れているから成功しただなんておもっちゃいない.マーク・アンドリーセン氏や登くんやjkondoさんが,ビジネスパートナーを求めた意味を(ぶつくさ評論家的に言うかもしれないが)肌感覚で理解している.たぶん.


それに呼応できるだけの肌感覚を,日本のスーツたちは持っているのだろうか.

(あ,またビルドが終わった…続きは後で)

*1:私も部品化の重要性が判っていても動けていないので,おそらくわかっちゃいない.