DEBUG HACKS
読んだ.
Debug Hacks -デバッグを極めるテクニック&ツール
- 作者: 吉岡弘隆,大和一洋,大岩尚宏,安部東洋,吉田俊輔
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2009/04/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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それでも書評の多くが好感をもって論じているのは,著者らが,自分らが酷く狭い部分にしか触れていないことを正確に認識して,それを冒頭で言い切っており,そのあとは完全に(良い意味で)突っ走っているからだろう.
この本は,Linux/i386のカーネル屋のための本である.組込み屋には役に立たないか.否,組込み屋から見た場合,カーネルデバッグに話題が絞られているのは,むしろ好ましい.この本の2章までは,RailsやCakeしか知らない連中にとっては滅多に使わない超絶技巧かもしれないが,組込みソフトエンジニアにとっては日常的に使える小技として映るだろう.コンパイル結果からインストラクションセットの概要を掴むというのは,i386のようなデファクトスタンダードが無く数ヶ月毎に違うインストラクションセットと向き合わなければならない込み世界では,しばしば行われていると思う.
3章以降は,全ての組込みソフトエンジニアにとって訳に立つとは言いがたくなってくる.私はカーネル屋でもあるので,Linuxというカーネルが,実行時にどんな手を使ってカーネルハッカーの手助けをしているのか,という行間読みをして楽しめた.
使っていない領域を特定のバイト列で埋めたり未使用リングバッファのポインタに特定の値を入れたりということは,assert.hを手に馴染ませている開発者にとっては当たり前のことだろうけれども,初めて知る読者も少なくはないだろう.
余談
ところで,品質だ信頼性だと叫んでいる組込み屋方面から,類書が出てきそうな雲行きは全くない.上流設計とテストさえ頑張れば品質はOK?
いいのかねぇそんなんで.