「 組み込み機器向けandroidに関してのつぶやき」に身も蓋も無いRe:をしてみる.


ともとは携帯電話向けに提供されていたGoogleandroidが、それ以外の組み込み機器向けのOSとして注目されている。私なりの見解もそれなりにあるのだが、勘違いしている部分もあるかも知れないので、確認のためにも私の見方をぽろぽろとTwitterでつぶやいてみたので、ぜひともフィードバックをいただきたい(Twitter、このブログのコメント欄やトラックバック、はてぶ、のいずれでも結構)。以下がつぶやきの内容。

釣られてみる.…が,トラバしたら「お前はSPAMだ」と弾かれた.ふふふ.(汗


イベント屋さんや露出度が高い人々と割と気軽に話ができてしまった結果としての意見なので,却って迂闊にモノを言えない.だから出典は聞かないで.

先に結論

Androidラヴな人々から石を投げられそうだけれど,昨今の組込み分野におけるAndroidブームを一言でぶった切るならば,

「商売としての組込みLinuxは死にかけていて,かといって他にネタが無いから」

Androidを選ぶ必要が無い理由

他のOSに比べて安いと飛びつく莫迦は多くない.

μITRONにしたってVxWorksにしたって,そこそこの金があれば積めばUIはある.QNXにだってある.eCosなら無料でも揃う.
WindowsEmbeddedだって別に悪くない選択肢だろう.

OSのコストが,なんていう話は良く聞くけれど,ハードウェア製品における組込みOSのコストなんて高が知れている.遥か昔のインターネットテレビのブラウザや初期i-mode端末のソフトウェア部品の単価が,基板上の部品のうち単価が最大のものを超えないような設定になっていたなんてのは,割とよく知られた話.WindowsEmbedded はもう少し殿様商売できるのかもしれないけれど,昔,CEと言われていたグレードの単価を見ると,同じような扱いに落ち着いているように見える.

ライセンスフィーをケチったばかりに結局初期投資が膨大になるのは,他のIT以上に組込み系ではよくある話.
Androidについても,初期コストは想像以上に高いという話がHTCから出ているようで.そりゃそうだろ今更言うなよと組込み屋さんなら思うはず.

ライセンスが少し変わった程度で世界は変わらない.

どこのセットメーカも現場や事務方がタコすぎてGPLBSDの違いも判らないってのは確かにある.セットメーカだけでなく,産業の米であるセミコンメーカでさえ「法務部門が…」と嘆いていたりする.たぶんこの国が転覆でもしない限りタコは消えないだろう.
ではあるのだけれど,私はそんな現状とAndroidブームは関係ないと確信する.GPLApacheになったくらいで歓迎パーティをするような連中なら,それ以前にどうにかしてGPLを採り込もうとしているだろうし,それが出来ない連中は,たとえPublic Domainになったとしてもそれを"よく判らないから"という難攻不落,鉄壁の理由で選ばないだろう.

Androidを歓迎せずにいられない理由

組込み系の展示会に数年足を運んでいれば気付くだろうけれど,組込みLinuxのブースは,年を追う毎に数や規模が縮小の一途をたどっている.
組込みLinux系では知名度が高かったトライピークスさんが飛んだし,そもそも親玉LinuxのためのLinuxコンソーシアムが新生を図らにゃならん転換期.
ガラパゴスだの設計古くて絶滅寸前だの言われたμITRONは,T-KernelやTOPPERSでどうにかこうにか断崖の直前で踏みとどまった感があるが,組込みLinuxの凋落を留めるネタが無い.なにしろネタを打ち上げなきゃいけない立場のEmbilxが解散しちゃう事態.組込みLinuxの団体と言えばあとはCELFだが,Embilxの後を継げるかというと,方向性が全然違う.


数年前,某有力組込みLinuxベンダが,これからは車載だインフォメーション系だと気を吐いているのを見たけれど,結局上手く商売と結びつけられているように見えない.そりゃそうだよ.クルマ屋さんって,自分の製品に使うものについては超保守的だもの.それにあのときゃ車載バブルだったし*1


そんなこんなで,組込みLinuxはどこも厳しい.イベント屋さん的にはとっても痛い.出展者が少なくなるのはマズい.


とはいえ,これは組込み業界全体の深刻な課題だと思うのだけれども,次のネタがない.マルチコアも実用化フェーズにあるのにイマイチ軟調.省電力設計とか環境ネタも特別なブレイクスルーが今のところは無い.仮想化は時期尚早感が漂う.セコミン屋さんたちが凍てついちゃって萌えるような石が出ない.機能安全とかディペンダブルとか人間中心設計とか,セミナーとしては良いかもしれないけれど,展示して栄えるものではない.


そんななか,組込みLinuxや組込みJavaといった,(ベンダにとっては)過去の資産や経験を潰さずに済み,イベント屋さんにとっては見た目バッチリで集客が見込めるものが出たら,そりゃ飛びつきますわ.


だからまあ,「組込み機器一般で注目されている背景」があるとすれば,そりゃもう組込みベンダ(特にLinux系ベンダ)が完全に行き詰まっていたことの反動ってのがそれを照らす陽の光ですよ,と思うワケです.
そういう動向を読んだのか否かは知らないけれど,あのタイミングでAndroidを出してきたGoogleってのは,さすがというか何と言うか.

未来予測

個人的にはAndroidってプログラマとして嫌いじゃない設計だし,SDKも揃っていて取っ付き易いと思う.使ってみて変なストレスも感じない.応用製品もガンガン出てくるだろうと思う.噂によれば来年くらいから特定アジア方面から,Android採用前提の廉価な*2携帯電話機がやってくるとかいうし.
画面を持った情報家電にも入ってくる*3だろうし,上記で車載はダメと言ったけれど,Googleのコンテンツ力と組み合わさったらそれも破れる可能性が高い.
Intent をネットワーク拡張して,画面の無いAndroidを搭載したガジェットが出て来る可能性もあろう.


ではあるが,今はバブル過ぎる.現在の盛り上がりは,沈み行く人たちの空騒ぎにより誇大されている.真面目にhack/広報普及している人たちには悪いのだけれど,これが,組込み分野の複数の人と情報交換した上での結論.


誤解されると悲しいので一応書いておくけれども,私は割とAndroidの将来を買っている.しかし,Androidに,組込み業界全体のネタ不足を解消させるだけの力はさすがに無いし,現在の組込みLinuxの凋落を下支えできるほど難解でもない*4.早晩,バブルは弾けるだろう.

適用除外

Web2.0とかケータイJavaとかウエラブルとかユビキタスとかから流れてきた人の新天地としてどうなのかってのは,よく判らない.webkitが使える手頃な端末があれば夢が広がるっていうのはあるのだろうと想像はつく.
でもまあアッチ方面の方々って,自分がコンテンツ作るためのプラットフォーム作っているのが誰かとかソコが儲かっているのかとかあんまし気にしないので,バブル(?)弾けたらどーなるんかなとかいう気がしなくも無い.けれどワタシャ門外漢なのでどうでもいいや.

*1:そうやって考えると,バブルでしか牽引できない業界なのかと鬱気分.そりゃマスコミの煽りの割に人材流出したりもするわな.

*2:でも多分ハードウェアに魂はこもっていない

*3:割と真面目に検討中という話も聞くし

*4:顧客は,自分ができないこと/やりたくないことに金を払う.Androidは,組込みLinux屋さんにとっては不幸なことに,UIやIPCといった難解もしくは面倒な部分を,むしろ平易にしてくれる.