オープンイノベーション
オープンイノベーション 組織を越えたネットワークが成長を加速する
- 作者: ヘンリーチェスブロウ,ウィムヴァンハーベク,ジョエルウェスト,PRTM,長尾高弘
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2008/11/25
- メディア: 単行本
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オープンソース信者は読むべき.
オープンイノベーションは,ソフトウェア開発におけるオープンソースの方法論と一体的に捉えられることがある.確かに,価値創造のために社外の情報源を活用するという発想などには両者の間で共通点が認められる.しかし,オープンイノベーションは,価値創造と価値獲得の源泉としてビジネスモデルを明示的に組み込んでいるところが異なる.
オープンソース原理主義者の中にはオレオレオープンソース定義を糾弾する者がいる.同時に,オープンソース信奉者の中には,オープンソース==オープンイノベーションというオレオレオープンイノベーション定義を持ち出す者がいたり,オープンソースはオープンイノベーションの最高の形態と無根拠に主張する者がいる.
オープンソース信者たちは一枚板ではないので,そのような矛盾があっても個々人の矛盾とは結びつかないのではあるけれども.
もちろん,オープンイノベーションを主張する経営学者たちの意見を鵜呑みにすべきとは思わない.オープンイノベーションの分析をしている筆者らも,オープンソースとフリーウェアとの区別をつけていないなど,ソフト屋から見ると穴がある気がするし.
だがしかし,とりあえず読んでおくべきであろうと思う.その上で反論/無視する立場をとるのは,自由.
研究開発型とみなされている中小企業の意思決定者は読むべき
ていうか,私には示唆的な部分が多かった.例えば,
また,中小企業がシステミックイノベーションの発達を左右するアーキテクトの役割をどの程度まで果たすことができるのかという問も面白い.中小企業は,本性で論じたメカニズムの多くを使えないはずだ.
一方,オープンソース開発など,他のオープンイノベーションプロセスには,中小企業でもオープンイノベーションプロセスのかじ取りをするための手段があるように見えるが,それについてもさらなる研究が待たれるところである.
地域の産業(工業)振興を考える立場の人々は読むべき(?)
これについては,まだ自信がない.この本が明らかにしようとしているのは大企業の事例なので,直接の役には立たない.でも地域経営の視点で,オープンイノベーションは検討されるだけの価値はあるのではないかと思う.経営資源に乏しいのは大手よりむしろ零細なのだから,外部の知財リソースをどうやって集めてくるかというのは大きな関心事であるべきなのではないか.また,オリンパスの事例のように,日本企業においても単に部品を買ってくるというよりは技術要素を求めてくるようなスタイルに変わってくるなかで,下請けたちも頭を切り替える必要があるはず.
というわけで,
これからも細切れ時間を見つけて,ちまちまと再読する予定.