東京都現代美術館のチケット売場担当は,しればいいのに.

ジョブズの本で,なんだか却って気分が塞いでしまったので,美術館にでも行こうかと思いつく.我ながら良いアイデア

現代美術館あたりが近くて良かろう.「伊藤公象 WORKS 1974-2009」.ふむ.結構よさげじゃない?
しかし,webページをしっかり読むべきだった.

バスで三ツ目通りを南下.現代美術館の周りがあり得ないほど混雑している.なんだこりゃ.ん?
メアリーブレア展? なんですかこりゃ.

ちなみに,帰ってきて判った.こういう事態になっていわけだ.


現在開催中の企画展「メアリー・ブレア展」はおかげさまでたくさんのお客様にお越しいただいております。

特に土日には混雑のため、チケットをお求めいただくために10分〜30分程度お待ちいただく時間帯もございます(特に開館直後および11時〜16時頃)。

本展チケットは、当館のチケットカウンターのほか、各種プレイガイド等でお求めいただけますので、お時間の余裕のない方は、あらかじめチケットをご用意の上ご来館いただくことをおすすめいたします。

チケット販売詳細はこちら

なお、同じく展示室内が混雑した場合には、入場にもお待ちいただく時間帯もございますので、なるべくお時間の余裕を持ってご来館くださいませ。

本展は、5日(月)まで会期を延長するほか、10月2日(金)、3日(土)、4日(日)は20:00までご覧いただけます(チケット販売は19:30まで)。

ディズニーネタかよ.まあ,現代美術の範囲などではないなんていうほど頭堅くないから,開催そのものに文句は無いけどな.

ディズニーは,ミッキーマウス保護法案を延々と出し続けたり水分子の意匠を我が物のようにして商売したりする著作権ゴロとしての企業姿勢がまず嫌いではあるのだが,それよりもキャーキャーいう取り巻きのほうがどちらかというとウザイ.ソリが合わない.身内にTDRの現役キャストが居るし,家内がディズニー映画音楽のファンで結婚式で流したし,長女が去年辺りまで年間パスポートを持っていたりもしたようだが,知らない,そんなことは私には関係ない*1
チケット購入まで40分.入場まで40分とか出ている.なんだそりゃ.私が大好きな物に置き換えたとしても,80分も待って混雑の中に突入するだけの魅力があるものがこの世にあると想像できない.たとえデート中でその後ゴージャスな思いができるとしても願い下げなのだが,まあそれは人それぞれだから私が口出しする話でもないだろう.


そうだ今日の私には関係ない.楽しんでくれ.私も楽しむ.建物は同じだが,別世界だ.そう思って,チケットを買おうとしたら呼び止められた.「お並びください.」

「お並びください」

は? 振り返ると,割と好みなスーツ姿の若い女性が申し訳なさそうな感じ満点の表情で立っている.こちらの風貌から,目当てがメアリーちゃんでないことは判っているっぽい.で,「並べ」とな?


控えめに見ても,40分の列の99.99%は「ウォルトが信じた ひとりの女性」とやらが目当ての家族連れや騒がしいスイーツ(笑,それに連行されたかわいそうな若い男たちだ.
「0.01%の側にいる私も,その騒乱に巻き込まれろと?」と言いかけて思いとどまった.あまりの不条理さにキレそうになったが,ここで罵詈雑言を並べてしまっては,まさに今朝本で読んだ境界人格のオッサンと同じになってしまう.
「あ,そうだ,コンビニとかでチケット買えますよね?」穏やかに聞いてみた.
「あいにく,いとうこうしょうさんの方は,当カウンターのみでして…メアリー・ブレア展は買えるのですが…」
つまり,あれか? 美術館斜め前のファミマで買えば40分節約できるって簡単なことにさえ頭の回らない情報弱者ディズニー大好きスイーツ(笑 どものおかげで,こんな酷いことになってるってか?
…とまでは口に出せない.なにしろ目の前にいる40分相当の長蛇の99.99%を敵にする.勝てる気はしない.

99.99%からさっきの申し訳なさそうな女性に視線を戻すと,本当に申し訳なさそうな表情になっていく.
まあ,彼女に責任はないし.美術が嫌いでこういう場所は選ばないだろうし,いじめるのもかわいそうだ.何しろ,割と好みだ.
「ありがとう」と,穏やかに微笑んで,その場から立ち去った.


まあ,あのチケット売場の責任者は,美術館経営の本ばかり読んでないで,たまには"現代"らしく工学書の「待ち行列」に関する章でも読むべきだってこった.しればいいのに

B2Fで,謎の展示

とぼとぼと歩いていたら,講堂でなにやらやっている雰囲気.入場無料.これはきっと一般ウケしないナニカだと直感.うきうき.
(ちなみに帰ってきて確認したら,しかし,公式ページには何も情報がない様子.入り口の総合案内にはパンフレットあったのだけれど.謎)

真っ暗な部屋で天井からの照明はプロジェクタ.床面に写る四角いブルースクリーン.「No signal. Input : computer」の文字がアクセント.
いかにもモダンバレーな骨格のお姉さんが肌を見せない人工的なバレエ服に身を包み,そこに倒れ込んでいる.おお,キてる.キテるよ.いいよ.メアリーたんの対極なのに,あちらもこちらも,判りやすく現代美術っう.

むっくり起き上がり手を微妙に動かしたり,ペンギン足でゆっくり動いたり.…とは言っても,舞台人の体の動かし方で,かつゆっくりと.相当に鍛え上げないとこういう動きはできない.
たまにかすかにキーンとかいうエフェクト音.判りやすい.

見る方も慣れたもので,広い講堂の好きなところに陣取り,好きなように見ている.静かに場所を移動し,満足とか飽きとかが得られたら出て行く.

この手のアスレチック系展示は,パンフレットの字面を読んでも何をしたいのかよく判らない場合が多い.かすかな動きの中から,各自の中にある風景を見つけ瞑想しようってコンセプトっぽい.まあいいや.どうせ学芸員や評論家に聞かれたから答えたっていう程度のものなのだろうし.enjoy! とか feel it! ってだけだよね.たぶん.勝手に解釈する.素人の特権.

*1:いや,無くはない